障害の一般的な内容 難病情報センターホームページより抜粋
※筋萎縮性側索硬化症(ALS) (指定難病2)とは
筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気です。しかし、筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かし、かつ運動をつかさどる神経(運動ニューロン)だけが障害をうけます。その結果、脳から「手足を動かせ」という命令が伝わらなくなることにより、力が弱くなり、筋肉がやせていきます。その一方で、体の感覚、視力や聴力、内臓機能などはすべて保たれることが普通です。
※この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
1年間で新たにこの病気にかかる人は人口10万人当たり約1~2.5人です。全国では、平成26年度の特定疾患医療受給者数によると約9,950人がこの病気をわずらっていて、徐々に増えています。
※この病気の原因はわかっているのですか
原因はまだ十分解明されていませんが、神経の老化との関連や興奮性アミノ酸の代謝異常、酸化ストレス、タンパク質の分解障害、あるいはミトコンドリアの機能異常といったさまざまな学説があります。
※この病気ではどのような症状がおきますか
多くの場合、手指の使いにくさや肘から先の筋肉がやせ、力が弱くなることで始まります。話 しにくい、食べ物がのみ込みにくいという症状や、足の筋肉がやせて力が弱くなる症状で始まることもあります。どこから症状が始まった場合でも、やがては呼吸の筋肉を含めて全身の筋肉がやせて力がはいらなくなり、身体を動かすことが難しくなります。のどの筋肉に力が入らなくなると発音しにくくなり(構音障害)、水や食べ物の飲み込みも難しくなります( 嚥下障害 )。また、唾液(よだれ)や痰(たん)が増えることがあります。呼吸筋が弱まると呼吸も十分にできなくなります。進行しても通常は視力や聴力、体の感覚などは問題なく、目やまぶたを動かす筋肉や排尿・排便に必要な筋肉には症状が出にくいことが知られています。
※この病気にはどのような治療法がありますか
1.ALSの進行を遅らせる作用のある飲み薬:リルゾール(商品名 リルテック)、あるいは点滴注射薬:エダラボン(商品名 ラジカット)が使われています。また、病気がみつかったときに体重が減っている患者さんでは、体重を維持するための栄養療法が大切であることが分かっています。
2.対症療法(さまざまな症状をやわらげる方法)
1)ALSにともなって起こる筋肉や関節の痛みに対しては毎日のリハビリテーションがとても大切です。
2)体の自由が利かないことや、病気に対する不安等から起こる不眠には睡眠薬や安定剤を使います。
3)呼吸困難に対しては、鼻マスクによる非侵襲的な呼吸の補助と気管切開による侵襲的な呼吸の補助があります。一般的には気管切開が必要な時期になると定期的に痰(たん)の吸引が必要になりますので、そのやり方など医療従者との相談が必要です。
人工呼吸器を使用する場合であっても基本的には在宅での生活になります。人工呼吸器や吸引器には電気が欠かせませんので、地震や台風などの災害時におこる停電に備えて予めの準備も必要です。
4)のみ込みにくさがある場合には、・・・食物の形態を工夫、少量ずつ口に入れて嚥下する、顎を引いて嚥下するなど摂食・嚥下の仕方に注意することが有用です。
飲み込みにくさがさらに進行した場合には、お腹の皮膚から胃に管を通したり(胃ろう)、鼻から食道を経て胃に管をいれて流動食を補給したり、点滴による栄養補給などの方法があります。現在は「胃ろう」(PEGとも云います)で栄養補給する方法が一般的です。
5)話しにくい、手の力が入らないなどの症状が進行すると家族や他の人とのコミュニケーションが大変になります。早めに新たなコミュニケーション手段の習得を行うことが大切です。文字盤とよばれるコミュニケーションボードを使用するには最初に練習が必要です。
体や目の動きが一部でも残存していれば、適切なコンピューター・マルチメディア(意思伝達装置)および入力スイッチの選択により、コミュニケーションが可能です。
※この病気はどういう経過をたどるのですか
この病気は常に進行性で、一度この病気にかかりますと症状が軽くなるということはありません。 体のどの部分の筋肉から始まってもやがては全身の筋肉が侵され、最後は呼吸の筋肉(呼吸筋)も働かなくなって大多数の方は呼吸不全におちいります。人工呼吸器を使わない場合、病気になってから死亡までの期間はおおよそ2~5年です。なかには人工呼吸器を使わずにゆっくり10数年にわたって進行する経過をたどる例もある一方、1年ほどの速い経過で呼吸不全となる例もあります。とくに高齢での発症、話しにくい・のみ込みにくい症状や呼吸の筋肉からの発症、そして早い時期に体重が大きく減ったり首の筋力が弱ったりする患者さんでは、進行が速いことがわかっています。このように、ALSは発症のしかたや経過には大きな個人差があることから、個々の患者さんに柔軟に応じた対応が必要です。
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