リフト移乗アンケート集計結果を読んで

リフト移乗アンケート集計結果を読んで 天野茂 

現在、車いすに1日8時間、2人体制で3回乗り降りしている。

A 車いすに乗る意義

車いすに乗って

               天野茂

車いすは 世界を広げる扉

頭を上に 姿勢を保つ

手足を動かし 前後に倒す

車いすに乗って 体を動かす

体が横から縦に 起きる

見る世界は 外へと広がる

庭の花 春夏秋冬を見る

車いすに乗って 自然を眺める

自由に向きを変え 移動できる

外出して自然 人とふれあう

会合 コンサート 作品展

車いすに乗って 世界を広げる

B これまでの経過

a 当初はリフトを使わないでベッド端座位から手で抱え上げてもらって車いすに移乗。

ア 1ベッドに座わらせる。2 カニューレから呼吸器エルボを外す。3両脇に手を入れて抱き上げて車いすに座らせる。(同時に当事者が足と腰を使って立ち上がろうとする。)4 カニューレに呼吸器エルボを繋げる。5 奥で真ん中に座らせる。

イ 座り直しの時は前から両脇に手を入れて抱き上げてもらい、同時に当事者が足と腰を使って立ち上がろうとして腰の位置を直す。

※ア・イ共に作業中はカニューレから呼吸器エルボを外す。

b 立ち上がる力が弱くなりリフト導入をすることに。

1 呼吸器回路の維持管理と移乗の両立が必要。

※ 2人体制でのリフトを使った移乗マニュアルづくり。

  手探りでいろいろ試して改良し、時間をかけて作成する。

  ヘルパーさんが手順を理解できるようにYouTubeに投稿、視聴してもらう。

  2人体制でスリング位置の調整、座る位置調整などを行い、移乗をスムーズに行っている。

2 2人体制でおこなう理由

1 体重61Kgの肢体不自由な身体

車いすでは曲がっている身体の方に倒れていくので座っている位置を直す必要がある。

座っている位置を直すには2人体制でおこなう必要がある。

2 呼吸器回路の維持管理が必要

1人で行う場合、場面1(質問1)・場面4(質問4)のときは呼吸器回路を外して行うことが必要。

場面2(質問2)・場面3(質問3)のときは呼吸器回路をつけたまま行うことが必要。

当事者の呼吸状態 自発呼吸がなく呼吸器回路を外すと呼吸ができないので苦しい。

回路を取り付けた後も設定回数での呼吸なので回復するのに時間がかかる。

スリングをつける・外す作業は、片手で短時間で行うことになる。

片手で行う作業はバランスが良くなく倒れるリスクがあり不安を抱えての作業は介護者・当事者の負担が大きい。

→2人体制でおこなうことを希望しています。

また座る位置の調整、洋服の着替えなどは2人体制で行う作業である。

3 声が出せない状態である。

吸引が必要になった時など移乗の途中では顔の表情で伝えている。移乗の途中で他のことに気をとられていると気が付かない。隣にいても表情をよく見ないと気が付かない。意識して顔を見る必要がある。

C 市の2人体制でのリフト移乗を却下する理由

「天野様のリフト移乗につきましては、技術的に1人の介護者による対応で可能であり、」

についてのアンケートの結果を読んで

「場面1(質問1) スリングを体の下に入れる時、左右交互に一人が体を支え、もう一人がスリングを下に入れる。

1人ではなく2人体制でやっている。スリングが左右の真ん中になるように調整する。

スリングが真ん中にないと釣り上げた時に体が傾いてしまう。申請者は重度の肢体不自由があり傾いた体は直せない。その為スリングを真ん中になるようにする必要がある。」

質問1の回答を読んで

この作業が一番大切な作業である。

この作業は1人で行う場合呼吸回路を引っ張る可能性がある。だから呼吸器を外して行う。

1呼吸器をカニューレから外す。2左向き側臥位にして片手で側臥位を維持し片手でスリングを入れる。3水を払ってからカニューレに呼吸器を着ける。4右側に回り右向き側臥位にし123を行う。

微調整をするために同じように左右2回目を行う。

また中心にスリングがない場合は3回目の作業が必要となる。

1、呼吸回路外すことは呼吸ができない時間です。

自発呼吸がないので1回の作業は30秒ぐらいで行う必要がある。

微調整も2回呼吸器を外して行うことになる。

短時間でも回数が多いと大きな負担です。

2、片手で側臥位を保つのは肢体不自由な身体に負担がある。

ヘルパーさんも二倍の力で支えて、もう一方の手でスリングを入れるので負担が大きい。

3、当事者は声が出せないので吸引が必要など困ったことを伝えられない。ヘルパーさんの顔を見ての気づきに依存している。

ヘルパーさん当事者の方にとって負担が大きい。

2人体制での実施を希望する。

場面2(質問2) リフトから車いすに乗る時。一人が前方にいて車いすの位置を確認して、リモコン操作。前から足をおして体が車いすに座る位置調整。

もう一人が後方にいてスリングを持ち上げて体の傾きを調整、など。体が真っ直ぐな状態で車いすに座れるようにする。

体が傾いて車いすに座ると少しづつ体が傾いて苦しくなって座っていられない。初めに座る時に真っ直ぐに座るように二人で位置を調整しながら座らせることが必要。

質問2の回答を読んで

この作業は呼吸器回路の維持管理をしながら行う。

片手でリモコン操作をし片手で位置調整を行うことでは不十分。そのまま車いすに乗ると一人では修正できない。申請者は体重61Kgあり一人では修正できない。修正中にバランスを崩すととめられず大きな事故になる。

現在の車いすの前に1人が立ち身体が奥に座るように足を押しながらリモコン操作して身体を降ろす。もう1人が車いすの後ろに立ち両手でスリングを引きながら身体の傾きを調整しながら降ろす。

座り終わったらそのままの姿勢を保つように支えている。前に居る人がスリングをリフトから外し後ろのスリングを持つ。後ろの人がティルトを上げる。申請者の身体が起き上がる時、前に倒れてしまわないように前の人が頭を支える。身体が横に傾いている場合は横に倒れないように支える。

この作業を1人でやるのは出来ないことが多く、2人体制でやる必要がある。

場面3(質問3) 車いすを移動させる時、一人が車いすを押し、もう一人が呼吸器回路と呼吸器を移動させる。

質問3の回答を読んで

この作業は呼吸器回路の維持管理をしながら行う。

申請者は呼吸器を付けて声が出せない状況です。移動させるとき安全を確認するため申請者の顔を見る必要がある。

真っ直ぐ座っている場合は車いすは前から引っ張る、呼吸器のワゴンを動かすを交互に移動させる。しかし、身体が傾いている場合(1人で座らせた場合は可能性が高くなる。)横に倒れないようにする必要があり、もう1人が必要となる。

場面4(質問4) 車いすへの移乗が終わりスリングを外す時、一人が体を前に倒し、もう一人がスリングを外す。

質問4の回答を読んで

1人で作業する場合は呼吸回路を引っ張ると事故になるので回路をカニューレから外す。

身体をかなり前に倒した状態を片手で維持し片手でスリングを抜くことになる。

スリングをはずしたら両手を申請者の体から離し、呼吸器回路エルボをカニューレに付ける。この間、呼吸は出来ない。

短時間で行うことになり体が倒れる危険が大きい。

その後洋服の着替えをする。1人が身体を前に倒した姿勢を維持する。もう1人が洋服を着せる。

1人でやると身体が倒れてしまい事故になるリスクがある。

2人体制でやることを希望しています。

質問5 1週間に1度4時間程度入るヘルパーさんが多く、2人体制で力を合わせてその都度位置を修正し、安全管理をしながら取り組んでいます。初めてヘルパーさんをやる人、経験の浅い人が多く入っています。この状況を考えてリフト移乗についてどう考えますか?

質問5の回答を読んで

※初めてリフト移乗をやるヘルパーさん、初めて呼吸器を付けている人のリフト移乗をするヘルパーさんが多くいる中で呼吸器を付けてベッドから車いすへの移乗を動画にしてYouTubeに・upして見てもらいました。

呼吸器をつけてリフトを使う up31・天野茂生活・1ベッドから車いすへ 1256回視聴

https://youtu.be/1DHRtBQnXHQ

多くのヘルパーさんがケアに入る前に動画を見てきてくれました。

また、呼吸器つけたまま車いすに移乗するやり方を知りたいという人も多くいます。

質問6 天野茂のリフト移乗について自分が、初めて行った時から現在までやってきて思うことがありましたらご記入お願いします。

質問6の回答抜粋

※当事者の 身体の特徴や癖を知りそして介助動作の安全確保する。

介助する側もまた安心して介助にあたれる現場環境が必要です。

※新人や慣れていないヘルパーでも安全に介助が行えるよう工夫されている。 一人では不可能な作業も多くあるため二人体制での介助が必要だと思う。

※当事者の場合は人工呼吸器も装着しているためリスク面も非常に高い。病院や施設でもリフトの移乗は一人では行っていません。 在宅でも同様のことは言えるはずです。

※リフト導入時と現在のADLの差があり途中で何度も方法を検討しその時の当事者が一番よい方法で行われている。また常に二人体制で行えることで安全策を取れている。

※当事者も含め危険認知と回避を行えている為、移乗時の事故は一回も起きていない。事故が無いという結果は二人介助が常に行えている要因が大きいと思う。

※いろいろ試行錯誤しながら今のやり方にたどり着きました。今のやり方が当事者が一番安楽な移乗の仕方だと思います。当事者の安心安全 ヘルパーの危険回避のため二人体制が望ましいと思います。

※安全が第一の仕事。 日ごとに体調の違う当事者が少しでも心地よく過ごせるよう作業したい。

まとめ 寝たきりにならないように、体のリハビリとして車いすに乗ることが必要です。1日3回車いすに乗り降りしている。2人体制で安全に確実に行っている。事故は一度も起きていない。

皆さんの回答を読んで、皆さんのケアに支えらて移乗を安全にストレスなく事故なく行えているにことに感謝申し上げます。

ALS在宅生活を考える会T

ALS在宅生活を考える会Tの活動を紹介。 重度訪問介護制度について ALS(筋萎縮性側索硬化症)とはどんな病気か。 ALSは一人一人症状と生活が違います。 一つの例として「しげるーむ」での介護を紹介します。

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